IT導入コンサルティング

中小企業のDX(デジタル・トランスフォーメーション)への備え方

DX(デジタル・トランスフォーメーション)とは

DX(デジタル・トランスフォーメーション)を分かりやすく表現すると、「デジタル技術を駆使してビジネスモデルを変革・創造する」という概念です。単なるIT活用だけではなく、蓄積・活用するデータの質・量を重視しているため、「デジタル」を使っていると理解してください。

DXの例として挙げられるのが、米アマゾン・ドット・コムです。アマゾンは、ネットショッピングという新しいビジネスモデルを創造しただけではなく、既存の小売業や出版業を衰退させるという影響を及ぼしています。

このようにDXは、既存のビジネスモデルを破壊する一面を持ちます。「当社は従来通りのビジネスを続けるから、DXは関係ない」とは言っていられません。規模の大小に関わらず、全ての経営者が認識すべき概念です。

2018年9月に、経済産業省が『DXレポート~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~』というレポートを発表しました。その内容は、

  • DXの推進が競争力強化には不可欠である
  • 企業の基幹システムは複雑化・老朽化したものが多く、デジタル技術の活用を妨げている
  • このままでは2025年以降、最大12兆円/年の経済損失が生じる可能性がある

というもので、企業経営者に基幹システムの刷新と、DX推進へのコミットを促すものでした。また、主に大企業へ向けたメッセージであると捉えられています。

参考:経済産業省『DXレポート~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~』https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_transformation/20180907_report.html

大企業のDX対応状況

株式会社電通デジタルの調査によると、経産省のレポートが発表された2018年時点で、日本企業の約63%は、DXに取り組んでいました。それが2019年では、7%増え、70%の企業がDXに取り組んでいます。また、56%の企業で一定の成果が出ていると報告しています。

参考:株式会社電通デジタル『NEWS RELEASE 2019年12月13日』https://www.dentsudigital.co.jp/release/2019/1213-000347/

DX事例も、各企業による発表が増えています。製造業、金融機関、商社、小売業、旅行業など、業種に関係なく、DXに取り組んでいることが分かります。

参考:文教大学『デジタルトランスフォーメーション(DX)の事例集』http://open.shonan.bunkyo.ac.jp/~hatakama/dx.html

このような、大企業によるDXへの取り組みは、今後も加速することが予測されます。

中小企業のDXへの備え方

では、中小企業はDXへどのように備えたら良いでしょうか?

先に述べたように、従来通りのビジネスを続けるにしても、経営者がDXについて理解することが必要です。その上で、

  1. 組織内で情報の共有ができること
  2. 業務の属人化を防ぐこと

が重要となります。

一見、デジタルとは無関係のようですが、DXのキモは、データの一元化と活用です。中小企業の多くは、重要なデータやノウハウを担当が個人的に管理し、組織内で共有できていません。まずはここを改善することが、DXへの備えの第一歩となります。具体的には以下のような取り組みがあります。

脱エクセル

エクセルは非常に便利なツールです。しかし、時間が経過するとコピーが増え、どれが最新版か分からなくなります。そのため、マスター・データの格納媒体には適していません。

コミュニケーションツールの活用

中小企業では、中途採用やパート従業員採用など、不定期に要員がチームに加わることが多くあります。コミュニケーションツールを使うと、追加メンバーも過去のスレッドを参照でき、業務の理解に効果的です。

以上のような脱エクセルやコミュニケーションツールの活用は、GoogleのG Suiteなどを使うことで、IT専門人材のいない中小企業でも容易に実現できます。

このように、基幹システムには登録していない重要なデータの共有化を進めることが、中小企業のDXへの備えなのです。

中小企業のDX実現へ向けたシステム構築

最後に、中小企業がDX実現へ向けたシステムを構築する際の留意点について、簡単に触れておきます。

まず重要なのが、データの一元化です。データには、取引データのように基幹システムで管理するデータと、顧客データのように、顧客管理システム(CRM)で管理するものがあります。これらのデータが相互に紐づいて一元管理できるシステムを構築する必要があります。

とは言え、経営資源の限られた中小企業が、自社専用のシステムを構築するのは不可能です。そこで、パッケージシステムを利用し、自社のビジネスモデルで最重要な部分のみカスタマイズする方法が現実的です。

この自社のビジネスモデルで最重要なものの洗い出し(要件定義)が、システム構築時に不可欠な作業となります。しかし、現場に任せていては、全社最適なものにならない可能性が高くなります。また、ベンダーに任せても、ベンダー都合が優先されます。

そこで、ビジネスモデル全体を把握した上で、ニュートラルな助言を与えてくれる、コンサルタントを、要件定義とシステム選定時に活用することが、中小企業のDXへの取り組みを成功させる上でのカギとなります。